日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.原発性硬化性胆管炎(PSC)と鑑別を要したIgG4関連硬化性胆管炎の1例

新潟県立吉田病院 消化器内科
中村厚夫、野澤優次郎、八木一芳

 症例は60歳代女性。肝内胆管の拡張を認め精査入院。検査成績ではALPの軽度上昇、IgG4は50.5mg/dlと正常、抗核抗体は1280 倍であった。腹部造影CTで肝内胆管の拡張、総胆管の壁肥厚、リンパ節の腫脹を認めた。膵腫大は認めなかった。ERCPでは総胆管壁の不整、肝内胆管の不均一な拡張を認めた。膵管に異常は認めなかった。IDUSで肝内胆管から下部胆管まで不均一な内側低エコーの肥厚を認めた。外側高エコーに異常は認めなかった。胆管生検では好中球優位の炎症細胞浸潤を認め、悪性所見は認めなかった。肝生検でPSCとは診断できないが硬化性胆管炎の所見であった。6ヶ月の経過観察では著変はなかった。胆管像はPSCを疑うが胆管生検のIgG4免疫染色を行ったところ陽性となり、プレドニン30mg経口投与を開始した。CT、ERCP、では軽度であるがIDUSで著明な胆管像の軽快を確認した。欧米では自己免疫性膵炎(AIP)において好中球を主体とした炎症細胞浸潤を伴い、血清IgG4が正常のType2AIPという考え方がある。本症例もIgG4が正常で好中球主体の炎症細胞浸潤を伴った硬化性胆管炎でありType2AIPに類似した症例であった可能性が示唆された。興味深い症例と考え報告する。