日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18.Schönlein-Henoch紫斑病の小腸病変評価におけるカプセル内視鏡の有用性

山梨大学医学部第一内科
浅川幸子、石田泰章、津久井雄也、小林祥司、吉田貴史、小馬瀬一樹、末木良太、山口達也、植竹智義、大塚博之、大高雅彦、佐藤 公、榎本信幸

【はじめに】Schönlein-Henoch紫斑病はアレルギー機序による全身性の細小血管炎により皮膚に紫斑を認めることを特徴とする疾患である。皮膚症状以外に、消化器症状、関節症状、腎症状、神経症状など多彩な臨床症状を呈し、消化器症状は85%に出現するとされ、小腸は好発部位といわれている。近年カプセル内視鏡により、小腸全域の観察が可能となった。今回カプセル内視鏡により、Schönlein-Henoch紫斑病の小腸の病変を認めた2例を経験したので報告する。【症例1】16歳男性、四肢の皮疹と腹痛が出現。アレルギーとしてステロイド治療行うも腹痛が増悪し、紫斑病疑いにて入院。皮膚生検にてHSPと診断され、小腸の精査目的にカプセル内視鏡を施行し、十二指腸下行脚を中心とする発赤とびらんを認めた。【症例2】21歳女性、上気道感染後に紫斑が出現し、発熱、持続する腹痛と背部痛を認め入院し、HSPと診断された。カプセル内視鏡検査にて十二指腸から回腸にかけて多発性の発赤を認めた。紫斑、腹部症状はPSL治療にて改善した。

【考察】HSPは臨床症状や画像検査による病変の分布の評価、内視鏡所見、病理学的所見などから総合的に診断を行う必要がある。またHSPを疑われた場合、十二指腸を含めた全小腸の精査を行うべきである。カプセル内視鏡は本疾患の診断、治療効果、経過観察に有用と考えられた。

【結語】Schönlein-Henoch紫斑病に対しカプセル内視鏡にて所見の得られた2例を経験したので文献的考察を含め報告する。