日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15.白斑所見で発見された胃MALTリンパ腫の検討

山梨大学 医学部 第1内科
高三野淳一、吉田貴史、大高雅彦、小林祥司、津久井雄也、浅川幸子、小馬瀬一樹、植竹智義、佐藤 公、榎本信幸

【目的・方法】胃MALTリンパ腫は多彩な内視鏡所見を呈し、まれに白斑所見だけの軽微な変化で発見される症例がある。今回、白斑所見で発見された胃MALTリンパ腫の臨床的特徴および内視鏡所見を検討した。【対象】2013年3月まで自施設で加療した胃MALTリンパ腫48例である。そのうち白斑所見を呈した症例は6例(12.5%)であった。今回用いた白斑の定義は、数ミリ大で不整形の白色~褪色域の病変を指し数個から多数認めるものである。【結果】男/女 1/5、年齢38~67歳(平均53.7歳)、全例Stage I(Lugano国際会議)、LDH/βマイクログロブリン/soluble interleukin-2 receptor は陰性であった。API2-MALT1 fusion gene は全例で陰性。Helicobacter pylori 陽性は4例であった。6例全例にHelicobacter pylori の除菌療法を行った。除菌療法成功後の平均観察期間14.3か月(6~26か月)で、CR2例、pMRD1例、NC3例であった。PD例やrelapse例はなかった。NC例のうち2例はHelicobacter pylori 陰性、他の1例はIgH:14q32の染色体異常を認め32Gyの放射線療法を追加しCRを6か月維持している。内視鏡所見では、白斑は萎縮性胃炎と異なり、非連続性の分布を示すのが特徴であった。除菌後に白斑の消失例は認められなかった。軽微な変化ではあるがCR例で白斑部の光沢が消失し萎縮瘢痕様にみえた。EUSでは2層の低エコー化した肥厚像を呈した症例はなかった。【考察・結語】白斑所見のみの胃MALTリンパ腫は12.5%認められ、萎縮性胃炎と鑑別の難しい症例が存在した。Helicobacter pylori 陽性であっても除菌療法に反応しない症例があり、慢性胃炎にHelicobacter pylori の除菌療法が適応となった現在では注意深い胃の内視鏡観察が必要と思われた。