日本消化器内視鏡学会甲信越支部

14.Child AおよびB肝硬変患者におけるプロポフォール鎮静下上部消化管内視鏡検査の安全性と有用性

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【目的】我々は、肝硬変患者におけるプロポフォール鎮静下上部消化管内視鏡検査(EGD)の検査中および検査後の安全性と有用性を検討した。【方法】(研究1)プロポフォール鎮静下に診断目的のEGDをしたChildA、B肝硬変患者に対するprospective, observational study。主要検討項目はEGD後24時間以内に発生した有害事象。副次的検討項目はEGD遂行率、偶発症、検査後1時間以内の回復率。(研究2)研究1の一部の症例において検査前、検査後30分、60分のプロポフォールの血中濃度の測定とdriving simulatorを用いて検査前後の運動作業能力を測定し、健常人20例の結果と比較した。【結果】(研究1)対象は2008年から2011年までにEGDを施行した肝硬変患者163症例(平均年齢67歳(42-82歳))が登録された。肝硬変の原因はHBV 34例、HCV46例、アルコール78例、その他5例。Child A:64例、B99例。全症例がEGDを施行し得た。プロポフォール平均使用用量は46mg(range 3-120mg)。全症例が1時間以内に回復し、検査中の偶発症を含め、24時間以内には有害事象は起きなかった。(研究2)肝硬変患者のEGD後30分、60分のプロポフォール平均血中濃度はそれぞれ123、73、45 ng/mLで、健常人123、65、37 ng/mLに比べて有意な差を認めず、運動作業能力の回復度に関しても肝硬変患者と健常者との間に有意差を認めなかった。【結語】プロポフォールは、ChildAおよびB肝硬変患者に対する診断目的のEGDの鎮静剤として有用であると思われた。