日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.除菌不成功後の経過観察中に自然消失したHelicobacter heilmannii感染慢性胃炎の1例

安曇野赤十字病院 消化器内科
樋口和男 須藤貴森 望月太郎 一條哲也

【はじめに】Helicobacter heilmannii(H. heilmannii)はネコ,イヌ,ブタなどの動物をreservoirとして人間に感染する人畜共通感染症の病原菌として知られ、慢性胃炎,MALTリンパ腫,胃癌などへの関与が報告されている。今回我々は3次除菌不成功後の経過観察中に自然消失したH. heilmannii感染慢性胃炎の1例を経験したので報告する。【症例】63歳男性【既往歴・生活歴】高血圧症、脳梗塞、ペットとしてイヌの飼育歴あり【現病歴・経過】2006年健診の上部消化管内視鏡(EGD)にて慢性胃炎、十二指腸炎認め、生検にてH. pylori及びH. heilmanniiの重複感染を指摘された。前医紹介され1次除菌にてH. pyloriは除菌できたが、H. heilmanniiは残存した。クラリスロマイシンを倍量とした2次除菌施行されたが、未判定のまま前医ドロップアウトしていた。2009年8月当科初診され、EGDにて慢性胃炎,十二指腸炎認め、生検病理組織標本でH. heilmanniiの菌体を認めた。H. pyloriの2次除菌レジメンに準じてメトロニダゾールを含む3剤併用療法での3次除菌施行したが、除菌判定のEGD(2010年2月)の生検で菌体認め、除菌不成功であった。その後、2012年9月のEGDでは萎縮性胃炎は認めるものの、発赤・ビランは目立たず、十二指腸炎は改善していた。生検ではH. heilmanniiの菌体は認められず、自然消失が推察された。H. heilmannii感染慢性胃炎の長期経過は未だ解明されていない。経過中に自然消失し、内視鏡像,病理組織像の経時変化を観察できた本症例はヒトにおけるH. heilmannii感染の病態を究明する上でも貴重な症例と考えられ、報告する。