日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.病変基部に出血性潰瘍を伴い、ESDを施行した胃粘膜下腫瘍の1例

済生会新潟第二病院 消化器内科
関慶一、本間照、岩永明人、阿部聡司、石川達、吉田俊明、上村朝輝
済生会新潟第二病院 外科
石原法子
済生会新潟第二病院 病理診断科、新潟大学 分子・診断病理学分野
味岡洋一

 症例は40歳代女性。タール便と貧血を主訴に来院した。胃角大弯後壁の胃底腺領域内に20mm大の粘膜下腫瘍を認め、隆起基部の口側に露出血管を伴う潰瘍を認めた。腫瘤表面は発赤調、平滑でびらんや潰瘍形成は認めなかった。腫瘤の頂部が口側へ倒れこむ形となり、肛門側からbridging foldを伴っていた。露出血管に対し再出血を予防する目的で止血用クリップでの処置を施行の上、入院管理とした。腫瘤の質的診断と内視鏡治療の可否を評価する目的でEUSを施行した。EUS所見では、胃壁は5層に描出され、腫瘤の主座は第3層に存在し、境界明瞭で、エコーレベルは比較的均一なやや高エコーを呈する病変であった。一部大きな分葉状、頭部付近では類円形に描出される部分とその内部に数mmの斑状低エコーが散在して認められた。腫瘤基部の第3層には断裂なく、第4層は圧排所見のみと判断した。EUS所見から質的診断はできなかったが、出血を来たしたSMTであり治療を優先しESDを施行した。切除標本病理所見は、腫瘤は粘膜下層に存在し、粘膜筋板に取り囲まれた胃底腺と幽門腺を含む異所性胃粘膜が形成しており、一部に腺房組織と導管様腺管構造を有するHeinlich2型の異所性膵も存在していた。