日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.食道癌ESD術後狭窄に対して一時的な食道ステント留置が有効であった1例

山梨大学医学部付属病院 第1内科
津久井雄也、大高雅彦、佐藤光明、吉田貴史、浅川幸子、辰巳明久、高橋 英、小馬瀬一樹、植竹智義、佐藤 公、榎本信幸

 症例は70歳男性。2009年8月に嚥下時の灼熱感を自覚し、9月の上部消化管内視鏡検査にて切歯より26-35㎝に全周性の0-Ⅱb型食道扁平上皮癌を指摘された。12月に入院の上、ESDを施行し、病理組織学的診断はpT1a-MM, pHM0. pVM0, INFb, ly0, v0であった。術後2日目からデキサメサゾン局注とバルーン拡張を繰り返し、ESD後の術後狭窄のため54回のバルーン拡張術を行い、2010年6月に退院となった。退院時に狭窄は残っており、1週間に1度内視鏡スコープでのブジー拡張術を継続した。しかし狭窄は次第に強くなり、10月に食道ステントを5日間留置し、抜去した。12月には再度狭窄が強くなり、経鼻内視鏡の通過が出来なくなったことから、2012年1月に食道ステントを再挿入し、28日間留置後に抜去した。その後現在まで1年4カ月再発、再狭窄を認めず通過障害の自覚症状も認めていない。食道ESD後の狭窄に関してステロイド局注やバルーン拡張術の単独・併用療法が主に行われているが、一部に拡張効果が不十分な例がみられる。一時的に食道ステントを留置することで有効な拡張が得られた症例を経験したので報告する。