日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8.細径内視鏡を使用することで異物除去術が可能となった食道憩室(Zenker憩室)の1例

飯田市立病院 消化器内科
高橋俊晴 玉井方貴 武田龍太郎 持塚章芳 岡庭信司 中村喜行

【症例】80歳代、女性
【主訴】頸部つかえ感
【現病歴】関節リウマチにて通院加療中であった。平成25年1月末より食事の嚥下困難とつかえ感を訴え、かかりつけ医を受診した。上部消化管内視鏡検査を施行され、上部食道の食残と狭窄を指摘された。精査加療目的に同日当科紹介受診となった。胸部CTにて頸部食道に憩室を認め、憩室から口側に多量の食物残渣を認めたため、内視鏡的異物除去術を施行した。スコープは当初GIF-Q260Jに透明フード装着したものを用いたが、食道腔内全体に残渣が充満しており、十分な視野を確保出来なかった。処置継続は穿孔の危険性が高いと判断し、細径スコープ(XP260NS)に変更したところ、食残の隙間から肛門側の管腔を確認可能となり、異物除去術が継続可能となった。異物は食物残渣であるため、生検鉗子を用いて胃内への落とし込む事で除去した。術後経過は良好であった。
【考察】消化管異物摘出には、一般には径の太いスコープが有利とされている。しかしZenker憩室では食道入口部に発生するため処置が困難となる事があるが、細径スコープにより内視鏡の操作性を確保し、処置を完遂し得た1例を経験したので報告する。