日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.ダビガトランによる食道炎の検討

下越病院 消化器科
入月聡、河内邦裕、山川良一

【目的】ダビガトランはトロンビンによるフィブリン産生機能を直接的に阻害する抗凝固薬である。ダビガトラン開始後に食道炎症状を訴える症例が多く見られたため、ダビガトランと食道炎の関連について検討を行った。【方法】まず2012年にダビガトランを処方された112例について、食道炎症状(つかえ感、胸やけ、呑酸)の有無および性別・年齢・用量・PPI併用との関連を検討した。次に2012年にEGDを施行した症例のうちダビガトラン内服中の35例、ワーファリン内服中の124例について、食道炎の発症率、部位、形態を比較検討した。【結果】食道炎症状の訴えは29/112例(25.9%)あり、14/112例(12.5%)で内服を中止した。性別・年齢・PPI併用の有無では食道炎症状の発症率に有意差はなく、ダビガトランの用量が300mg/日の群で4/5例(80%)、220mg/日の群で25/107例(23.4%)と有意差を認めた。EGDにおける食道炎の有無はダビガトラン群で7/35例(20.0%)、ワーファリン群で14/124例(11.3%)であったが有意差は認めなかった。食道炎の部位ではダビガトラン群が中部食道で5例、下部食道で4例認め、、ワーファリン群では中部食道で2例、下部食道で14例認めた。食道炎の形態は、線状がダビガトラン群5/35例(14.3%)、ワーファリン群14/124例(11.3%)で有意差はなく、円形がダビガトラン群3/35例(8.6%)、ワーファリン群0/124例(0%)と有意差を認めた。【まとめ】ダビガトラン開始後に食道炎が高率で起こり、中部食道の円形びらん・潰瘍を多く認めた。ダビガトランを処方する際には食道炎の副作用も念頭に置く必要がある。