日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.鋸歯状病変に発生したと考えられる大腸微小SM癌の1例

済生会新潟第二病院 消化器内科
本間照、岩永明人、関慶一、石川達、吉田俊明、上村朝輝
鈴木医院
渡邉雄介、鈴木利宏
新潟大学 分子・診断病理学分野
味岡洋一
済生会新潟第二病院 病理診断科
石原法子
済生会新潟第二病院 外科
桑原明史、武者信行、酒井靖夫

 症例は80歳代男性。住民健診での便潜血陽性精査のためCFを行った。盲腸に大きさ4mmの軽度に発赤した半球状隆起性病変を認め、生検した。生検組織は粘膜全層と粘膜下層が充分採取されており、癌腺管が粘膜筋板を通過して粘膜下層に浸潤している所見を認めた。粘膜内癌には鋸歯状過形成性腺管が隣接して認められた。追加治療目的に当院へ紹介となった。初回CFから2カ月後にCFを再検した。盲腸の前回生検されたと思われる部位に粘膜のひきつれがみられ、その中心にわずかに発赤調で大きさ6mmの扁平隆起性病変を認めた。インジゴカルミン撒布で表面は軽度の凹凸不整が認められ、2型のpit-patternを呈していた。隆起表面の崩れや無構造はみられなかったが、前回生検でSM浸潤が明らかであったこと、今回の内視鏡像で1回の生検後にしてはひきつれが目立つことからCF時には処置をせずに外科切除の方針とした。再検CFの1カ月後、回盲部切除を行った。切除標本の肉眼所見は再検CF像とほぼ同じであったが、pitは2型の他に小型pitが混在し、被覆上皮野が広い印象であった。病理組織所見は高分化型腺癌で粘膜下層浸潤800μ、脈管侵襲は認めなかった。近年SSA/Pの癌化が注目されている。本例は大きさが4mmと微小であり、生検でSM浸潤が確認できた稀な症例であった。発育進展を考える上で重要な症例と思われ、文献的考察を加えて報告する。