日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.直腸リンパ濾胞過形成から典型像へ進展した潰瘍性大腸炎の1例

佐久総合病院 胃腸科
竹内結、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、高橋亜紀子、篠原知明、岸埜高明、若槻俊之

 潰瘍性大腸炎 (UC) の内視鏡初期像は十分解明されていないが、今回、直腸リンパ濾胞過形成から典型像へ進展した潰瘍性大腸炎の1例を経験したので報告する。【症例】患者は20歳代の女性。血便と便秘が2ヶ月継続したため、近医を受診した。内視鏡検査で、直腸に限局して襞様の隆起が多発し、一部にアフタ様びらんを伴っていた。クラミジア直腸炎を疑って生検したが、抗原免疫染色は陰性で、粘液PCRも陰性だった。クラリスロマイシンを内服したが改善せず、原因不明直腸炎として当院へ紹介された。当院でもクラミジア直腸炎を疑いアジスロマイシン1000mgを投与したが、症状改善せず経過観察となった。16ヶ月後に血便、倦怠感が悪化し、大腸内視鏡所見は初回と著変なかったが、直腸炎型UCを疑いメサラジン3.6gの内服と注腸を開始した。症状は一旦改善したが、3週間後に再度悪化したため入院となった。内視鏡で直腸に不整形びらん、膿性分泌を、直腸から上行結腸まで連続性に細顆粒状粘膜を認めた。UCと診断しプレドニゾロン60mg静注を開始したところ、症状は改善を認め3週間後に退院となった。プレドニゾロン5mgまで減量したところで再燃したが、内視鏡では直腸からS状結腸に軽度の発赤、微小白色点を認めるのみで改善傾向であった。ステロイド依存性UCと判断し、プレドニゾロンを20mgに増量しアザチオプリン50mgを併用した。現在外来にてプレドニゾロン減量中であるが、再燃なく経過している。【結語】本例の初診時に見られた、直腸リンパ濾胞過形成はUCの初期像であったと考えられた。