日本消化器内視鏡学会甲信越支部

3.外科手術にて確診した直腸粘膜脱症候群の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
名取高広、深澤佳満、小嶋裕一郎、石田泰章、川上智、久野徹、岩本史光、廣瀬純穂、細田健司、鈴木洋司、望月仁、小俣政男
山梨県立中央病院 外科
中山裕子、古屋一茂、宮坂芳明
山梨県立中央病院 病理
小山敏雄

 症例: 20歳代, 男性. 主訴: 血便. 既往歴: 特記事項なし. 現病歴: 18歳頃から血便あり, 1年前より血便が頻回となったため, 近医受診. 大腸鏡検査で直腸に隆起性病変があり, 当院外科紹介. 外科より診断治療目的で当科紹介. 排便時にいきむ習慣はなし. 大腸鏡検査では, 肛門縁から4/5周性の発赤調部分と淡い白苔が付着した部分が混在する小隆起が集簇した病変を肛門縁から約3cmの範囲に認めた. 生検結果は炎症性肉芽組織であった. 注腸造影検査では約3cmの範囲にほぼ全周性の不整な粘膜面を呈していた. 上部消化管内視鏡検査, カプセル内視鏡検査では特記所見は認めなかった. 排便時いきむ習慣はないとのことであったが, この時点で直腸粘膜脱症候群(MPS)を疑った. 治療方針として内視鏡的粘膜切除術, 経肛門的外科切除を検討したが, 外科と相談し, 肛門縁にかかっている点, 繊維化多く切除の難渋が予想されたため, 外科切除を実施した. 切除標本は分割となったが, 組織学的にMPSの確定診断となった.
MPSは多彩な形態をとるとされ問診で診断がつくことが多いが, 本症例は問診上いきむ習慣がなく、診断に苦慮した1例である。文献的考察を加えて報告する。