日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌の一例

信州大学医学部付属病院 消化器内科
金井圭太、小口貴也、丸山真弘、渡邉貴之、村木崇、新倉則和

 十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌の一例症例は78歳,男性.2型糖尿病にて当院糖尿病内科で加療中,肝胆道系酵素の上昇(AST 122 IU/l, ALT 125 IU/l, γGT 610 IU/l, T-Bil 10.47 mg/dl, ALP 759 IU/l)を認めたため当科紹介受診した.腫瘍マーカーは正常値であった.CTでは胆管は拡張し,十二指腸乳頭部に漸増性に淡く造影される径20mm大の腫瘤影を認め,同部での胆管狭窄を認めた.MRIでは腫瘤はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈し、拡散能の低下を認めた.EUSでは,十二指腸乳頭部に辺縁整で内部はほぼ均一で一部に無エコー域を伴う低エコー腫瘤を認め,筋層浸潤,胆管進展が疑われた.ERCでは,下部胆管に不整な狭小化を認め腫瘍の胆管進展が疑われた.乳頭部からの生検では低分化癌,一部に扁平上皮への分化を認めた.以上より,十二指腸乳頭部癌(腫瘤潰瘍型)と診断し,明らかな遠隔転移を認めなかったため当院外科にて膵頭十二指腸切除術を施行した.肉眼的形態分類は腫瘤潰瘍型,大きさは42×25mmで、膵・十二指腸への浸潤を認めた.組織学的には3~4割を扁平上皮癌,残りは主に角化壊死を伴う低分化な癌細胞が腫瘍内を占め,腺腔を形成する腺癌成分は僅かであり,それぞれは明瞭な境界を示していなかった.胆管進展部や1か所認めた転移リンパ節(14)も同様の所見であった.術後補助化学療法の希望が無く,現在外来にて経過観察中である.比較的稀な十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌の一例を経験し,術前の画像所見と病理所見を再検討し報告する.