日本消化器内視鏡学会甲信越支部

1.胆管メタリックステントの逸脱により肝膿瘍、十二指腸穿孔、敗血症性ショックをきたした1例

山梨大学医学部 第一内科
原井正太、進藤浩子、高橋英、横田雄大、高野伸一、深澤光晴、佐藤公、榎本信幸

 症例は65歳、男性。2011年10月、閉塞性黄疸にて当科受診、膵頭部癌による胆管、十二指腸、上腸管膜動脈、門脈浸潤を認めた。胆管に対してfully covered metallic stent、十二指腸水平脚の浸潤に対して十二指腸ステントを留置し、化学療法(GEM/S-1併用療法)を開始した。化学療法開始から12ヵ月後、発熱、腹痛にて受診し、血液検査で炎症反応高値、肝胆道系酵素上昇を認めた。CTではS6,7に6cm大の肝膿瘍、十二指腸下行脚に胆管ステントの逸脱、周囲に少量のfree airを認めた。胆管ステント逸脱に伴う肝膿瘍、十二指腸穿孔と診断し緊急入院となった。入院4時間後にショックとなり、敗血症、DICを合併した。敗血症の原因としては、第一に肝膿瘍を考え、経皮的肝膿瘍ドレナージ術を施行した。十二指腸穿孔に対しては、胃管留置による保存的加療の方針とし敗血症、DIC治療を優先させた。3日後に上部消化管内視鏡を施行した。十二指腸下行脚に逸脱した胆管ステントを認め、遠位側が十二指腸ステントでせき止められ、近位側は乳頭対側の十二指腸壁に突き当たっていた。逸脱した胆管ステントを抜去すると、乳頭対側に潰瘍瘢痕を認めた。炎症反応改善後、再度内視鏡的胆管ステント留置を試みたが、膵癌の浸潤により乳頭部が変形し胆管開口部は同定できなかった。PTCDを留置し、ランデブーテクニックによりUncovered metallic stentを留置した。食事開始後も問題なく経過し退院となった。胆管メタリックステントの逸脱に伴う肝膿瘍、消化管穿孔は致命的になりうる重篤な合併症である。胆管ステント留置に伴う合併症についての検討を加えて報告する。