日本消化器内視鏡学会甲信越支部

64.ENBD用チューブと経鼻胃管を用いたドレナージシステムによる連日の嚢胞内 洗浄と、内視鏡的ネクロゼクトミーが奏効した感染性膵嚢胞の1例

新潟県立中央病院 内科
有賀 諭生、坂牧  僚、山川 雅史、津端 俊介、平野 正明

【症例】50代男性。【主訴】上腹部痛。【既往歴】特記事項なし。【生活歴】アルコール:ビール350ml  1本+日本酒1合程度、ほぼ毎日。【現病歴】X年8月某日、会合にて大量飲酒(飲酒量不明)。2日後の午前6時頃より強度の上腹部痛が出現し当院救急外来受診、CTで急性膵炎と診断し入院となる。【入院後経過】入院当日(第1病日)の検査では、予後因子、造影CT  gradeともに重症判定には至らなかったが、第5病日の造影CTで後腹膜から横行結腸間膜の液体貯留増加と膵実質の造影不良域出現を認め増悪傾向であった。その後、血液検査での炎症反応は改善傾向となったが、CTでは膵周囲の液体貯留は増加傾向となり発熱も遷延していた。第36病日のCTで最大径25cm大の被包化された液体貯留を認め、急性膵炎後仮性嚢胞と診断した。第37病日に超音波内視鏡下嚢胞ドレナージを施行、7Fr  ENBD用チューブを留置した。嚢胞は一時縮小したが第51病日のCTで嚢胞の再増大を確認、第58病日に瘻孔部をバルーン拡張し嚢胞内を洗浄、7Frの両端pig  tail型チューブ2本留置し内瘻とした。その後2回は同様に嚢胞内洗浄、内瘻チューブ留置したが効果不十分であり、第78病日に内視鏡的ネクロゼクトミーを施行、終了時に5Fr  ENBD用チューブを嚢胞内に挿入し、このチューブをガイドとして18Fr経鼻胃管を嚢胞内に留置した。その後、連日でENBD用チューブから生理食塩水1000mlを注入し経鼻胃管から回収する要領で嚢胞内洗浄、ドレナージを継続した。この後、内視鏡的ネクロゼクトミーを4回施行、5回目の時点で嚢胞内に壊死物質を認めなくなったためENBD用チューブ・経鼻胃管を抜去し7Frの両端pig  tail型チューブ2本を留置し内瘻とした。その後の経過は良好で第134病日のX+1年1月某日に退院した。【結語】ENBD用チューブと経鼻胃管を用いたドレナージシステムによる嚢胞内洗浄と内視鏡的ネクロゼクトミーは本症例の治療において非常に有用であったと考えられ、若干の考察を加えて報告する。