日本消化器内視鏡学会甲信越支部

63.膵AVM(arteriovenous malformation)の1例

新潟県立新発田病院
岡  宏充、夏井 正明、安住  基、瀧澤 一休、坪井 清孝、青木 洋平、山崎 和秀、松澤  純、渡辺 雅史

症例は52歳男性。2010年9月初旬から上腹部痛が出現。9/14、腹痛増強し近医受診。腹部USで膵頭部に腫瘤が疑われ、9/15当科外来紹介受診。CTで膵頭部に辺縁が早期濃染し内部がlowな腫瘤を認め、同日入院。質的診断ははっきりとせず、禁食・抗生剤開始し経過観察したが腹痛は続き、9/21のCTで腫瘤の増大を認めた。9/22、Angio施行。SMAGで膵頭部に網目状の異常血管増生および門脈の早期描出を認め、膵動静脈奇形(AVM)と診断。腹痛の持続および短期間での腫瘤の増大は局所的な膵炎が関与している可能性も否定出来ず、SMAにカテーテルを留置し、重症急性膵炎に準じた動注療法を開始した。その後、腹痛は軽快し、5日間で動注療法は中止とした。9/28、CT再検し、腫瘤の縮小を認めた。今後、腹痛の再燃や出血、門脈圧亢進症の出現の可能性が懸念されることから、患者に十分な説明の上、膵頭十二指腸切除の方針とし、10/14に退院。しかし、10/28ごろから腹痛が再燃し、11/1再入院。保存的に治療行い、11/12膵頭十二指腸切除術を施行。切除病理では、十二指腸漿膜下および膵臓間に拡張し屈曲蛇行した異常血管の増生と不規則な分枝および静脈壁の肥厚を認め、AVMに合致した所見であった。術後は、症状再燃なく外来経過観察中である。膵AVMは稀な疾患であり、若干の文献的考察を加え報告する。