日本消化器内視鏡学会甲信越支部

61.大腸癌イレウスに対して大腸ステント留置後、一期的に手術し得た5例の検討

岡谷市民病院 外科
藤井 大志、一萬田正二郎、荒居 琢磨、佐近 雅宏、阿達 竜介、三輪 史郎、百瀬 芳隆、澤野 紳二
岡谷市民病院 消化器内科
川嶋  彰、永野  聡
岡谷市民病院 病理診断科
石井 恵子

【背景】大腸癌イレウスに対して人工肛門造設術やイレウス管留置にて減圧し、待機的に手術に臨んでいた。最近大腸ステント留置が保険適応となり、大腸ステント留置が大腸癌イレウスに対する“bridge to surgery”や姑息的治療として良好な結果が報告されている。【目的】今回我々は当院における大腸癌イレウスに対する大腸ステント留置の有効性を検討した。【方法】対象は2012年に大腸ステントが健康保険適用となってから現在までの当院における大腸癌イレウスに対し大腸ステントを留置した5例で、男女比は男性4例・女性1例、平均年齢は65歳(63歳~70歳)であった。【結果】腫瘍部位は上行結腸が3例、下行結腸が1例、S状結腸が1例であった。全症例とも大腸イレウスにて来院し、5例中3例は緊急で大腸ステントを留置した。また、5例中2例ははじめ経鼻的イレウス管を留置したが減圧が思わしくなく、大腸ステントを留置した。大腸ステント留置後から手術までの平均日数は9日(6日~18日)であった。5例中1例は大腸癌イレウスのため閉塞性腸炎となったが、保存的に改善し手術を施行し得た。全症例とも大腸ステントにて減圧でき、術前の腸管処理も通常通り行えた。また、穿孔等の合併症もなく全症例一期的に腹腔鏡下にて根治術を施行し、術後縫合不全等の合併症もなく独歩退院した。摘出標本においては全症例で穿孔はなかったが、虚血性潰瘍状の変化を認めた。【考察】大腸ステントでは左側結腸における有効性が主に報告されているが、当院では5例中3例が上行結腸であり、右側結腸におけるステント留置も有効であると考える。また留置後、ステントによる虚血や圧迫による穿孔の報告もあり、留置後早期の手術が望ましいと考える。結果として、当院において全症例ステント留置が合併症もなく成功し、減圧・腸管処理により待機手術とほぼ同条件の術野が確保できたため、腹腔鏡下にて一期的に根治術を施行し得たと考える。【結語】大腸癌イレウスに対して低侵襲かつ安全に手術を施行する上で、大腸ステントは有用であると考える。