日本消化器内視鏡学会甲信越支部

60.後腹膜線維症により腸閉塞・横行結腸軸捻転を呈した1例

山梨県立中央病院 消化器内科
沼野 史典、久野  徹、小嶋裕一郎、石田 泰章、川上  智、深澤 佳満、岩本 史光、廣瀬 純穂、細田 健司、鈴木 洋司 望月  仁、小俣 政男

症例:95歳、男。主訴:嘔吐、腹痛。現病歴:後腹膜線維症による水腎症、尿路感染症、前立腺肥大、および原因不明のネフローゼ症候群、diffuse  large  B  cell  lymphomaで当院泌尿器科、腎臓内科、血液内科に通院中であった。2011年4月腹痛、嘔吐のため当科受診。腹部単純レントゲン写真で、下行結腸より近位側の著明な拡張を認めた。CT検査では下行結腸中部に狭窄機転があり、S状結腸は造影効果不十分であった。イレウス管を経鼻内視鏡を用いて挿入、減圧した。その後症状は徐々に改善しイレウス管を抜去した。1か月後に実施した大腸鏡検査では下行結腸に狭窄を認めたが、内視鏡は抵抗なく通過可能であった。退院後外来経過観察中2011年9月にサブイレウスとなったが、入院翌日に大量の排便があり、改善し退院となった。2012年6月に再度イレウス様症状にて受診、CT検査で上行結腸から横行結腸に著明な拡張があり、横行結腸はその拡張部位より遠位側で急峻に狭小化し、下行結腸からS状結腸は虚脱していることから横行結腸軸捻転と診断した。前回入院時に認められた下行結腸狭窄は明らかではなかった。経鼻的にイレウス管を挿入、その後大腸鏡にて横行結腸狭窄部より近位側の減圧を実施、症状は経過し現在外来通院中である。以上、後腹膜線維症のため腸閉塞・横行結腸軸捻転を呈した症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。