日本消化器内視鏡学会甲信越支部

51.Crohn病発症後12年で直腸癌を併発した一例

済生会新潟第二病院 消化器内科
岩永 明人、木村 成宏、本間  照、堀米 亮子、本田 博樹、窪田 智之、関  慶一、石川  達、吉田 俊明、上村 朝輝
済生会新潟第二病院 外科
酒井 靖夫
済生会新潟第二病院 病理診断科
石原 法子

潰瘍性大腸炎(UC)の長期罹患例では、大腸癌のリスクが高いことは広く認識され、サーベイランス内視鏡が日常臨床で浸透しつつある。一方、Crohn病(CD)においては、癌合併例はUCに比してまだ少なく、その発生母地も大腸の他、痔瘻を含む瘻孔や小腸も考えられ、サーベイランスのあり方は混沌としている。今回我々は、CD発症後12年、Infliximab(IFX)導入5年後に直腸癌を併発した一例を経験したので報告する。症例は30歳代の男性である。肛門痛の増強を主訴に来院した。CRP等の炎症反応が高値で、CT上、直腸右壁に辺縁に造影効果を有する3cm大の低吸収領域を認めた。またMRIでは、同部はT2強調画像にて内部不均一な高信号を呈した。当初、膿瘍を疑い加療するも軽快せず、大腸内視鏡にて直腸~肛門管癌(tub1,  tub2,  muc)の診断を得た。直腸切断術(Miles’operation)を行い、術後化学療法としてmFOLFOX6を施行中、現在4ヶ月間無再発生存中である。また、本症例においてIFXと発癌の関連性は不明であるが、その使用においては今後注意が必要である。CDの有病率が増加している近年、発癌症例も今後増加する可能性を認識し、日常診療にあたるべきであると考える。