日本消化器内視鏡学会甲信越支部

44.超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引で診断し得た退形成性膵癌の一例

新潟県立吉田病院 内科
野澤優次郎、中村 厚夫、遠藤 新作、八木 一芳

症例は70歳代、男性。2011年12月、1ヶ月で10kgの体重減少を認めたため、近医を受診した。随時血糖299  mg/dl,  HbA1c 8.8%と糖尿病の増悪を指摘された。2012年1月、原因精査のため当科を初診した。CTで膵は全体に腫大し、不均一に造影された。膵尾部から脾門部にかけて低濃度腫瘤を認め、膵周囲から肝門部にかけてのリンパ節腫大を認めた。また、肝腫大および肝内に大小不同の低濃度腫瘤を認めた。以上から膵癌、肝転移を疑われたが、腫瘍マーカーはCEA  3.4  ng/ml,  CA19-9  7 U/mlと正常範囲だった。1月中旬、超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引(Endoscopic  ultrasound-guided  fine  needle  aspiration; EUS-FNA)を行い、退形成性膵癌(巨細胞型)と診断された。2月、シスプラチン(100  mg/body,  day  1)、ゲムシタビン(1000  mg/body,  day  8,  15)併用療法を開始した。副作用としてGrade  3の貧血を認めたため、シスプラチンを80  mg/bodyに減量して治療を継続した。9月現在8コースを終了し、画像上は部分寛解を維持している。他臓器転移を有する膵癌の症例では、画像診断のみで病理学的検索がなされずに化学療法を行うことが少なからずある。本症例のようにEUS-FNAによる組織診断を加えることで有効な薬剤を選択できる可能性があり、予後の延長が期待できるかもしれない。化学療法を行う症例にはEUS-FNAを積極的に行うべきと考える。