日本消化器内視鏡学会甲信越支部

40.胆管浸潤肝細胞癌に対し放射線治療や胆道系処置など集学的治療が奏功した2例

山梨大学 医学部 第一内科
高田ひとみ、佐藤 光明、田中 佳祐、津久井雄也、辰巳 明久、三浦 美香、進藤 邦明、深沢 光晴、中山 康弘、井上 泰輔、前川 伸哉、坂本  穣、佐藤  公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 放射線科
大西  洋、荒木  力
市立甲府病院 内科
小松 信俊、雨宮 史武

【初めに】肝細胞癌(HCC)の胆管浸潤は稀であるが、手術不能例の予後は不良である。これまで当科で経験した症例から、胆管ステントや放射線治療が有効であった2例を文献的考察を加えて報告する。【症例1】症例は75歳男性、糖尿病と肝硬変症(NBNC)で近医通院中。ビリルビンの軽度上昇を認め腹部CTを撮影したところ肝後区域の門脈浸潤(VP2)と肝門部胆管浸潤を伴う42mmのHCCを認め当院紹介。左肝内胆管にも拡張を認め切除範囲が広範となることから切除困難と判断され、黄疸の責任病変と考えた左胆管に7Fr7cmのプラスチックステントを留置し、S7腫瘍本体と肝門部の腫瘍栓に対し58Gy(2Gy/28回)の放射線治療を行った。経過中胆道出血を来したが自然止血された。術後1年以上原発巣はコントロールされ、その後肝内に異所性再発を認めるも選択的なTACEとPEITを追加し1年8か月現在無再発生存中である。【症例2】症例は82歳女性、C型肝硬変と心臓弁膜症で近医通院中。AFPが82ng/mlと上昇ありCTを撮影したところS3に21mmのHCCを認め当科紹介。MRCPで左肝内胆管B2/3分岐部やや末梢のB3が途絶し末梢が拡張し、胆管浸潤ありと診断。認知症ありまたICGR15が25%であることから切除不能と考え、ラジオ波焼灼術も適応外であり腫瘍栓を含むS3腫瘍本体に対し60Gy(6Gy/10回)の定位放射線治療を行った。術中放射線性胃炎を発症し、後に胃前庭部の狭窄を来した。しかし術後2年無再発で外来通院し、施術後3年現在生存中である。【まとめ】当院初発肝細胞癌400例(2005年~2011年9月)のうち来院時脈管浸潤を来していたのは28例(7%)で、胆管浸潤は4例(1%)に認め全例手術は不能であった。胆管浸潤例4例中2例は肝機能不良、アルコール依存症などで積極的治療が不可であったが、2例に対し胆道系処置や放射線治療を含む集学的治療を行い比較的良好な予後を得ることができた。【結語】胆管浸潤肝細胞癌は手術不能であっても放射線治療を含む集学的治療で予後の改善を図ることができる。