日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.Meckel憩室による絞扼性イレウスの1例

山梨大学 医学部 消化器、乳腺、内分泌外科
滝口 光一、飯野  弥、森  義之、須藤  誠、柴  修吾、中田 晴夏、藤井 秀樹

今回我々はMeckel憩室に連続する索状物による絞扼性イレウスを経験したので報告する。症例は50歳男性。1週間前から腹痛を認め、近医を受診し、腸炎の疑いで経過観察されていた。その後嘔吐、下痢を認め、腹痛も増悪したため、当院救急外来を受診した。CT検査で回腸を中心に小腸の拡張を認め、イレウスの診断で当科入院となった。入院後、絶飲食、点滴加療、胃管挿入で症状の改善を認め、食事開始後も問題なく、退院となった。退院後3日目再度腹痛を認め、当科を受診した。腹部所見は右下腹部から臍周囲に軽度の圧痛を認めたが、筋性防御など腹膜刺激症状は認めなかった。しかし、周期的に強い腹痛を認めた。CT検査で、腸間膜の渦巻状変化と索状物を認め、明らかな腸管の虚血は認めなかったが、内ヘルニアによる絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した。手術所見は、血性の腹水を少量認めた。暗赤色の腸管とそれに連続する暗赤色の索状物を認めた。索状物の先端は回盲部付近の小腸間膜につながっており、その索状物により小腸が絞扼されていた。絞扼されていた小腸は軽度の浮腫を認めたが、血流障害の所見は認めなかった。索状物はバウヒン弁より約50cm口側に存在しており、Meckel憩室と考えた。Meckel憩室の壊死を認め、小腸部分切除術を施行した。組織学的所見ではMeckel憩室と診断され、索状物には動静脈を認めた。今回のイレウスはMeckel憩室と憩室間膜帯(mesodiverticular  vascular  band)による索状物に小腸がはまり込んだことによる絞扼性イレウスと考えた。