近年、集学的治療により進行癌の治療成績が向上している。また、緩和的内視鏡治療の技術、デバイスも進歩している。今回、手術不能と診断され、途中長期の中断を経たが、放射線療法、化学療法、内視鏡治療を適時組み合わせる事でQOLの維持を図りながら生命を支える事が出来た症例を経験したので報告する。症例は75歳男性。既往歴に特記すべき事は無し。喫煙歴は無いが、アルコールは若い頃濃い酒を多飲していた。現病歴。2007年8月頃から嚥下時のつかえ感を自覚。改善ないため9月に当院初診。上部消化管内視鏡検査にて下部食道の狭窄を伴う進行食道癌と診断、他院へ紹介となった。精査の結果多発リンパ節転移を伴っており、姑息的放射線療法30G/10回にて経過観察の方針となった。その後当院の外来を1回受診した後中断。3年後の2010年9月腹部膨満感を主訴に当院受診。入院精査にて腹腔内リンパ節腫脹による幽門狭窄と診断。前医へ再度紹介するも、治療適応なしと判断された。本人、家族と相談の上、もう一度食べたいという希望を叶えるため、化学療法と十二指腸ステント挿入による症状の緩和を方針とした。FP療法1クールによりリンパ節腫脹が縮小傾向となり、十二指腸ステントの挿入を行った。有害事象、偶発症も無く、普通食の経口摂取可能となり退院。化学療法には元来積極的でなかった事から、TS-1の内服等にて外来経過観察。ステントの開存は13ヶ月維持されたが、リンパ節腫脹の増悪により狭窄症状が出現。バルーン拡張、stent in stentにて経口摂取を19ヶ月維持出来た。2012年6月再び腹部膨満感出現し入院。リンパ節腫脹は高度となっており、急速に全身状態悪化、化学療法にて一時軽快したが、多臓器不全となり7月永眠された。姑息的放射線療法後4年9ヶ月、ステント挿入後1年8ヶ月であった。考察。他の報告より長くステントが開存し、QOLが維持出来た理由は、原発巣でなかった事、化学療法を組み合わせた事と考えられた。治療不能進行癌においても緩和的内視鏡治療が有用な症例があり、施行を検討すべきと思われた。