日本消化器内視鏡学会甲信越支部

31.IgG4関連十二指腸病変が疑われた一例

JA厚生連 佐久総合病院 肝胆膵内科
桃井  環、比佐 岳史、清水 雄大、古武 昌幸、高松 正人

【症例】80歳代、男性。2日間持続した左下腹部痛と下痢を主訴に当科を受診した。血液検査では白血球および膠質反応の上昇と血清アルブミン値の低下を認めたが、肝胆道系酵素と腫瘍マーカーは正常であった。USで胆管拡張を指摘されたが、閉塞機転は不明であった。CTおよびMRIでは肝外胆管壁は全体に肥厚し、膵頭部の乏血性領域で狭窄していた。膵全体に石灰化を認め、尾部主膵管の一部が拡張していた。一方、膵頭部乏血性領域と離れて、幽門輪から十二指腸球部に著明な壁肥厚を認めた。EGDでは、幽門輪から十二指腸球部に浮腫状肥厚と内腔狭小化を認め、発赤、びらんを伴っていた。副乳頭および主乳頭は腫大していた。膵管造影では頭部主膵管がわずかに造影されるのみで、分枝膵管の不整拡張を伴っていた。胆管造影では膵内胆管に偏位を伴う締め付け様狭窄を認め、同部からの擦過細胞診およびENBDからの胆汁細胞診はClassIIであった。血液検査ではIgG4の著明な上昇(1210mg/dl)を認め、十二指腸球部の生検では粘膜固有層に多数のリンパ球・形質細胞が浸潤し、IgG4陽性形質細胞は40個以上/HPFであった。よって、IgG4関連疾患を考え、確定診断目的にステロイド投与(30mg/日)を施行した。ステロイド開始5週後(10mg/日)のCT、MRIでは、胆管拡張、膵頭部乏血性領域、拡張した尾部主膵管、幽門輪から十二指腸球部の壁肥厚の著明な改善を認めた。EGDでは、幽門輪から十二指腸球部の浮腫と内腔狭小化は改善し、発赤、びらんは消失していた。胆管造影では膵内胆管の狭窄は残存していたが改善していた。膵管造影では頭部主膵管は馬尾状に終わり、分枝膵管は拡張していた。副乳頭からの造影で背側膵管が造影され、膵管癒合不全と診断した。背側膵管は軽度拡張し、頭部領域に複数の狭窄を認めた。【考察】本例は、慢性膵炎を背景とするIgG4関連膵病変、および膵病変と離れて存在する十二指腸球部壁肥厚を呈したIgG4関連十二指腸病変の併存と考えられた。