【目的】医原性Mallory-Weiss症候群の臨床的特徴を明らかにすること。【対象】2006年1月から2010年12月の上部消化管内視鏡110026件のうち、Mallory-Weiss症候群(MSW)と診断された122症例を対象とした。内視鏡中に発症したものを医原群(67例)とし、検査時にすでに発症していたものを単純群(55例)とした。男性割合、年齢の中央値は医原群64%(43/67)、59歳(35-96)、単純群72%(40/55)、66歳(24-89)でありいずれも差は認めなかった。また抗凝固薬、抗血小板薬内服率は医原群15%(10/67)、単純群25%(14/55)と差は認めなかった(p=0.23)。【結果】1.医原性MSWの発症率は0.06%(67/109971)。2.萎縮(木村・竹本分類)の割合は医原群67%(45/67)、単純群65%(36/55)で差はなかった(p=0.99)。3.送気伸展時にし開を示す紡錘形裂創率は医原群27%(18/67)、単純群42%(23/55)で差はなかった(p=0.12)。4.萎縮と紡錘形裂創率の関連は医原群・萎縮なしで13%(3/22)、医原群・萎縮ありでは31%(14/45)で、単純群・萎縮なしで42%(8/19)、単純群・萎縮ありで42%(15/36)であり差はなかった。5.扁平上皮まで裂創がおよぶ割合は医原群で12%(8/67)、単純群で13%(7/55)であり差はなかった(p>0.99)。6.止血処置を要した割合は医原群7%(5/67)、単純群25%(14/55)であり単純群で有意に止血を要した(p=0.01)。また医原群の線状裂創で0%(0/49)、紡錘形裂創で28%(5/18)に止血処置を要した(p=0.005)。単純群でも線状裂創で9%(3/32)、紡錘形裂創で48%(11/23)に止血処置を要した(p=0.003)。萎縮の有無別では、止血を要したのは医原群・萎縮なしで9%(2/22)、医原群・萎縮ありで7%(3/45)であり(p>0.99)、単純群・萎縮なしで32%(6/19)、単純群・萎縮ありで19%(7/36)であった(p=0.64)。【結語】医原性 Mallory-Weiss症候群は、単純群と比較して男女比、年齢、萎縮の有無、裂創の形態、扁平上皮まで裂創がおよぶ割合において有意な違いはなかった。ただし、止血を要する割合は単純群および紡錘形裂創で有意に高かった。