日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.ESDにより確定診断を行うことができたIFPの1例

山梨大学 医学部 第一内科
加藤  亮、小馬瀬一樹、高田ひとみ、浅川 幸子、末木 良太、植竹 智義、大高 雅彦、佐藤  公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 人体病理学
近藤 哲夫

症例は40歳、女性。2010年9月心窩部不快感のため近医で上部消化管内視鏡検査を施行したところ前庭部に隆起を伴う潰瘍性病変を認め、生検にてGroup1であったためPPI投与で経過観察となった。2011年10月頃には嘔吐が時々みられ上部消化管内視鏡検査再検したところ投薬にも関わらず潰瘍性病変が不変であったため2011年11月25日当院紹介となった。2011年11月28日当院での上部消化管内視鏡検査では、前庭部前壁に頂部に潰瘍を有し、周囲粘膜が正常隆起性病変を認めた。潰瘍辺縁を拡大観察するも、demarcation  lineはなく、異常血管も認められなかった。病理学的検索のため生検を行ったがGroup1であった。2011年12月27日上部消化管内視鏡検査再検したところやはり潰瘍の改善が見られなかったため再度生検を行ったがGroup1であった。粘膜下腫瘍の可能性も考え2012年2月20日ボーリング生検を行ったところ、Group4を認めた。ESDによる一括切除が可能か判断するため2012年3月23日EUSを施行した。EUSでは粘膜下層を主体とした20mm大の低エコー腫瘤として描出され、第4層は保たれていた。確定診断のためESDによる完全生検を2012年4月2日施行した。検体は65×50mmで、内部に45×35mmの頂部に潰瘍を有する隆起性病変であり、割面では表面平滑な黄白色の充実性腫瘤であり、粘膜下に位置していた。病理にてvesicularなクロマチン、小型の核小体を有する紡錘形細胞が、細血管の増生、好酸球浸潤を伴って粘膜下に増生しており、免疫染色では、CD34陽性、ALK陰性、c-kit陰性を示したため、胃前庭部の炎症性類線維ポリープ(Inflammatory fibroid polyp, IFP)の診断となった。SMT様の形態をとり、頂部に潰瘍形成を呈す隆起性病変に際してはIFPも考慮に入れる必要がある。今回若干の文献的考察を加えて報告する。