日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.好酸球性胃腸炎にHelicobacter pylori感染を合併した1例

信州大学 医学部 消化器内科
中村  晃、岡村 卓磨、小林  聡、大工原誠一 、野沢 祐一、福沢 慎哉、中村真一郎、奥原 禎久 、山田 重徳、横澤 秀一、菅  智明、田中 榮司
信州大学 医学部附属病院 内視鏡センター
岩谷 勇吾、新倉 則和
信州大学 医学部附属病院 臨床検査部
岩谷  舞

【症例】症例は10代後半の女性。2009年11月頃より食欲不振、上腹部痛、食後の嘔吐を認めたため近医を受診した。血液検査にて好酸球の増加を認め、精査目的に当科紹介となった。当科初診時の血液検査では白血球数は5210/μlと正常であったが、好酸球比率が16.5%と高値であった。低蛋白血症、貧血は認めず、IgEは454  IU/mlと上昇がみられた。上部消化管内視鏡検査では前庭部に粗造な粘膜のひび割れ様所見を認め、さらに軽度の萎縮性胃炎、胃潰瘍瘢痕、十二指腸潰瘍瘢痕を認めた。小腸二重造影検査・大腸内視鏡検査では異常を認めず、腹部造影CT検査では前庭部の壁肥厚を認めた。腹水は認めなかった。前庭部、胃・十二指腸潰瘍瘢痕からの生検で著明な好酸球浸潤を認め、以上より好酸球性胃腸炎と診断した。アレルギー疾患の合併は認めなかった。H2-blocker投与開始にて経過観察が行われたが症状は改善しなかった。胃生検ではHelicobacter  pylori(H.pylori)は陰性であり、血清抗H.pylori抗体も陰性であったが、経過観察目的に施行した2010年7月の内視鏡時の生検組織でH.pylori陽性であったため、8月にクラリスロマイシンによる一次除菌療法を施行した。効果判定目的に11月に内視鏡を施行したところ十二指腸潰瘍の再発を認め、生検でもH.pyloriの残存を認めた。H2-blockerをPPIに変更したところ若干の症状改善を認め、2011年3月にメトロニダゾールによる二次除菌療法を施行し、除菌は成功した。しかし、その後も症状は完全に寛解せず、PPI内服によりある程度の症状改善が得られるため、ステロイドは導入せず現在もPPI継続中である。【考察】好酸球性胃腸炎とH.pyloriの合併に関しては報告が少なく、両者の関与は明らかではない。類縁疾患である好酸球性食道炎に関しては、H.pyloriとの罹患率に逆相関がみられることが報告されているが、好酸球性胃腸炎に関しては除菌にて症状が改善した症例も報告されており、一定の見解は得られていない。本症例ではH.pylori除菌療法施行後も組織の好酸球浸潤や症状に著変はみられず、両者の関与は少ないと考えられた。