日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15.切除12年後に肝腫瘤として発見された子宮内膜癌腹膜播種の一例

信州大学医学部附属病院 消化器内科
小口 貴也、金井 圭太、丸山 真弘、渡邊 貴之、村木  崇
信州大学医学部附属病院 内視鏡センター
新倉 則和
信州大学医学部附属病院 第一外科
本山 博章
信州大学医学部附属病院 産婦人科
近藤 沙織
信州大学医学部附属病院 放射線科
黒住 昌弘
信州大学医学部 保健学科 生体情報検査学
太田 浩良

【症例】75歳女性。【既往歴】52歳:胆嚢結石にて胆嚢摘出術、63歳:子宮内膜癌(漿液性腺癌)にて単純子宮全摘・両側附属器切除・骨盤内リンパ節郭清・傍大動脈リンパ節郭清術(stageIa、術後化学療法・放射線療法なし)、72歳:横行結腸癌にて横行結腸切除術(pT3N0M0  stageIIA、補助化学療法なし)。【現病歴】経過観察目的に施行された腹部造影CTにて早期相で輪状濃染され、後期相で中心部に遅延性濃染される15mm大の肝S4から十二指腸球部に突出する結節影を認めた。横行結腸癌の肝転移が疑われ、精査加療目的に当院紹介となった。なお、1年前の腹部造影CT検査では上記腫瘤を認めなかった。【検査結果】CEA、CA19-9の上昇は認めなかった。腹部EOB造影MRIで同病変はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈し、造影早期に輪状濃染し、後期相では中心部に遅延性濃染を認めた。FDG-PETでは肝腫瘤はSUVmax 6.9の集積が認められたが他に病変は認めなかった。上部消化管内視鏡検査では十二指腸球部に壁外圧排を認めた。超音波内視鏡検査では肝内へと連続した境界不明瞭な腫瘤を形成する充実部を内部に伴った嚢胞性病変として描出され、一部十二指腸筋層との連続性が疑われた。【術前診断】以上より、横行結腸癌肝転移および十二指腸浸潤と診断した。【開腹所見】腫瘤は十二指腸球部腹側面に癒着していたが、漿膜から剥離可能であった。剥離面から悪性所見を認めなかったため、十二指腸切除術は施行しなかった。【病理学的所見】組織学的には大小の管状や乳頭状、充実性胞巣状を呈して増殖する腺癌で既往の横行結腸癌ではなく子宮内膜癌に類似しており、免疫染色にてCK7(+)、CK19(+)、CK20(-)、CDX2(-)、Pax8(+)、MUC2(-)、MUC5B(-)、MUC5AC(-)、MUC6(-)であることから子宮内膜癌の異時性転移と診断した。病変の主座が肝内ではなく肝と十二指腸の間に存在しており、腹膜播種の肝浸潤と診断した。【術後経過】現在ドセタキセル+カルボプラチン併用療法を施行中である。【考察・結論】今回、我々は切除12年後に肝腫瘤として発見された子宮内膜癌腹膜播種の一例を経験した。画像所見を再検討し報告する。