日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.HSV2初感染により急性肝炎を起こした62歳健常人の1例

富士見高原医療福祉センター 富士見高原病院 内科
唐澤 忠宏、小松  修、矢澤 正信
富士見高原医療福祉センター 富士見高原病院 放射線科
松下 智人
富士見高原医療福祉センター 富士見高原病院 外科
安達  亙

コンプロマイズドホストでない、健常人に起きるHSV急性肝炎は稀である。62歳男性が、発熱、咽頭痛で入院した。検査所見では肝胆道系逸脱酵素・ビリルビンの上昇やPTの低下などから急性肝炎所見を認めた。咽頭所見からはウイルス性咽頭炎が示唆された。入院第9日に、単血清HSV-IgM高値からHSVによる急性肝炎の疑いが濃厚となった。その後は対症療法・経過観察主体の治療とした。最終的に、ペア血清によるHSV-IgM・IgG値の上昇、PCR検査によるHSV-DNA入院第1日陽性・入院第16日陰性、HSV2-IgGの上昇などから、HSV2初感染による急性肝炎と診断した。幸いにも本症例では肝不全・肝移植・死亡には至らず回復をみたが、文献では重症例、死亡例、剖検で判明した症例が多く報告されている。原因不明の肝炎をみた場合には、肝炎ウイルス以外に、HSV、EBV、CMV、薬物などの検索を行い、高次医療機関へ転院も念頭に置くべきである。