【症例】75歳男性。【主訴】食欲低下【既往歴】心不全、心房細動、脳梗塞、肺気腫、陳旧性肺結核症、胆石症【現病歴】患者は数日間の食欲低下、微熱を自覚していたが自宅で様子を見ていた。訪問看護師来訪時に受診を勧められ近医を受診。肝胆道系酵素の上昇及び、胆嚢結石を指摘され閉塞性胆管炎の疑いにて当院紹介となった。【経過】当院受診時の血液検査ではT-Bil 1.6mg/dl、AST 184IU/L、ALT 59IU/L、LDH 454IU/L、ALP 2288IU/L、γ-GTP 349IU/Lと肝胆道系酵素の上昇及び、長径33mmの胆嚢結石を認めた。しかし胸腹部単純CTで明らかな胆管結石や胆管拡張を認めず閉塞性胆管炎とは考えにくかった。入院後の腹部超音波検査では肝全体に最大10mm程度の類円形低エコー性腫瘤を多数認め、転移性肝腫瘍、粟粒結核症、肝膿瘍などが考えられた。また入院時のCTで肺に腫瘤性病変を認め、ProGRP 218IU/Lと高値であり肺小細胞癌の存在が疑われた。精査中DIC傾向が認められたためFFP、ビタミンK製剤を使用しつつ治療方針確定のため肝針生検を施行したが、結果を待つ間に呼吸不全をきたし入院8日目に永眠された。死亡後生検結果により、超音波で指摘された低エコー性腫瘤は小細胞癌肝転移であったことが判明した。【考察】肝機能異常を契機に肺小細胞癌多発肝転移と診断され、急激な転機をたどった一例を経験した。原発性肺癌は転移をきたしやすい腫瘍の一つである。転移の好発臓器として脳、骨、肝、副腎等があり、転移先の臓器障害を契機に肺癌遠隔転移の診断がつくことはしばしば経験される。一般的に肺小細胞癌の平均生存期間は4.5ヶ月と報告されているが、本症例では受診から死亡まで8日間と急速な経過であり、腹部超音波検査で特殊な画像所見が得られたため若干の文献的考察を加えて報告する。