日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.高齢肝細胞癌患者に対する侵襲的治療の予後改善効果

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科
高橋 俊作、須田 剛士、長島 藍子、兼藤  努、上村 顕也、田村  康、高村 昌昭、五十嵐正人、川合 弘一、山際  訓 、野本  実、青柳  豊

近年の社会背景を反映し、肝細胞癌(HCC)患者も高齢化している。侵襲的治療の高齢者に対する適応判断に明確な基準は無いが、積極的な治療により良好な経過を経ている高齢HCC症例を経験したので報告する。症例は2001年の78歳時、HCV感染による肝硬変と診断された男性。2008年10月、S6に単発のHCCが初発し肝部分切除術を施行した。2009年2月以後、S6のHCC再発に対し経動脈的化学塞栓療法とラジオ波焼灼療法による治療を繰り返していたが、2011年5月に門脈後枝から右枝本管に腫瘍塞栓を伴う急速なHCCの進行を認めた。腫瘍マーカーはPIVKAII  75000  mAU/ml以上、AFP  281  ng/dl、L3分画56.5%であった。糖尿病およびCCr  56  ml/min、Alb  3.1  g/dl、T-Bil  0.8  mg/dl、PT-INR  1.13、Plt  9.9  万/μlを考慮し、リザーバーから全肝に対して薬剤の用量を減量したFP療法(5-FU  125  mg/body/23h+CDDP  5  mg/body/1h、体表面積  1.51 m²)を2012年8月まで適宜施行した(4日/週×3週を1コース、4日/週×2週を1コース、5日/週×1週を4コース)。治療は奏効し、門脈血流の回復、腫瘍の著明な縮小ならびに腫瘍マーカーの著減を認めた(PIVKAII  27  mAu/ml、AFP  7 ng/dl、L3分画6.2%)。さらに、経過観察のMRIでS6に単発の新期病変を認めたため、ラジオ波焼灼療法を施行し、現在、外来で経過観察中である。1996年~2010年の間に当院でHCCに対する初回治療を受けた330例を対象とし、高齢HCC患者の予後を検討した。性別、HBV/HCV感染の有無、Child分類、腫瘍ステージ、腫瘍マーカー、治療法を用いた多変量ロジスティック解析により各症例の生死に関する傾向スコアを算出した。80歳以上の30例を高齢群、高齢群に近似する傾向スコアを有する30症例を対照群と設定し、生存日数を指標としたlog-rankテストにより予後を両群間で比較した結果、生命予後に有意な差異を認めなかった(p=0.38)。以上より、80歳以上の高齢患者にも積極的な治療が予後の改善をもたらしているものと推察され、高齢であること自体を治療法選択の根拠とすべきではないと考えられた。