日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.ステロイド投与が奏功したアルコール性肝炎の一例

新潟市民病院
佐藤 里映、五十嵐健太郎、荒生 祥尚、五十嵐俊三、佐藤 宗広、相場 恒男、米山  靖、和栗 暢生、古川 浩一 杉村 一仁

【緒言】アルコール性肝炎は常習飲酒家がさらに過剰な飲酒をした場合に黄疸、発熱、腹痛などで発症することが多いとされる。重症型アルコール性肝炎では断酒にかかわらず肝腫大が持続し、肝性脳症や肺炎、急性腎不全、消化管出血などの合併症やエンドトキシン血症などの全身合併症を伴う予後不良な疾患である。今回、重症型アルコール性肝炎に対してステロイド内服を行い良好な経過をたどった一例を経験したので報告する。【症例】36歳女性。23歳から飲酒を始め、入院前はビール3500ml/日程度飲酒していた。黄疸、腹部膨満を主訴に当院を受診し精査加療のため入院となった。入院時は著明な黄疸、腹水、下腿浮腫を認め、意識は清明であった。血液検査では白血球15210/μlと上昇、総ビリルビン22.5mg/dlと上昇、PT25%と低下していた。以上より重症型アルコール性肝炎と診断した。断酒、補液、輸血、ウリナスタチン投与の保存的治療を行ったが改善を認めず白血球がさらに増加した。顆粒球除去療法を患者が拒否したため、第14病日よりプレドニゾロン40mg内服を開始した。第15病日頃から黄疸は軽減、その後腹水が減少し白血球低下し、52病日に退院した。【考察】重症型アルコール性肝炎に対して過去の文献では顆粒球除去療法、ビリルビン吸着療法などを施行した例が報告されているが、本例ではステロイドのみで軽快した。腎不全や消化管出血、感染症などの全身合併症を伴わず、プレドニゾロンが著効したことが寄与したと考えられた。