日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.閉塞性大腸癌29症例の検討

小諸厚生総合病院
汐月 信仁、小松 信男、林  征洋、増田 勇毅、汐月  修

閉塞性大腸癌29症例の検討【目的】閉塞性大腸癌の手術は糞便や腸内容の貯留および口側腸管の浮腫、拡張があり緊急手術で切除と再建を同時に行うかどうかの判断は難しく患者の安全が第一であり、1回の手術ですませて人工肛門を避ける努力は必要である。最近では内視鏡下にステントやチューブで閉塞を解除し、口側腸管を減圧して手術する方法が勧められている。そこで当院に受診された閉塞性大腸癌の29症例の検討を行った。【方法】2010年5月27日~2012年6月25日までに当院に受診された閉塞性大腸癌の患者に対する加療のアプローチに対し後ろ向きコホート研究を行った。【成績】閉塞性大腸癌と診断した症例全症例に対し経肛門的イレウス管による減圧を試みた。閉塞性大腸癌29症例の占拠部位は直腸6症例、S状結腸15症例、下行結腸3症例、横行結腸3症例、上行結腸2例であった。29症例での下部消化管内視鏡検査処置による穿孔等の重篤な合併症の発症は認めなかった。経肛門的イレウス管挿入不成功症例は4例であった。癌の占拠部位は直腸1症例、S状結腸2症例、横行結腸1症例であり、失敗例はいずれも狭窄が高度であるかもしくは結腸の屈曲部に多かった。失敗の原因は大腸の屈曲部に病変がある場合に多かった。挿入成功症例25例中1症例は減圧不十分であり経肛門的イレウス管挿入翌日に緊急手術を行った。緊急手術24症例中12症例は待機的に手術による一期的吻合を行い、残り12症例に関しても人工肛門増設術を行った。【結論】閉塞性大腸癌の加療アプローチに対し緊急手術によるアプローチ以外にも経肛門的イレウス管挿入により待機的に手術した場合のほうが麻酔リスクの低下、抗凝固薬の作用の減弱、手術法の選択肢の増加等患者にとって有益である場合が多い。閉塞性大腸癌に対してはまず、経肛門的イレウス管による減圧を行うべきであると考える。