日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.内視鏡的に切除した直腸高分化型神経内分泌腫瘍の1例

新潟県厚生連 糸魚川総合病院 内科
高取 俊介、野々目和信、金山 雅美、月城 孝志、康山 俊学、樋口 清博
富山大学 付属病院 病理部
石井 陽子、笹原 正清

症例は69歳男性。検診にて便潜血陽性を指摘され、近医で下部消化管内視鏡検査を施行。直腸に隆起性病変を指摘され、精査加療目的に当科紹介受診となる。当院で施行した下部消化管内視鏡検査では、直腸内に表面に陥凹を伴った1cm大の粘膜下腫瘍を認めた。表面に明らかなびらんはなく、EUSを施行したところ第3層に首座をおく、一部に高エコー像を伴った腫瘤を認めた。内視鏡的粘膜切除を施行し、肉眼的には完全切除できた。病理組織で、腫瘍径12mmの、索状からリボン状配列を主体とした類縁形で比較的均一な細胞を認めた。免疫組織化学的にはChromograninA陽性、Synaptophysin陽性、CD56陽性を認め、MIB1  LIは1~1.5%であった。高分化型神経内分泌腫瘍(Well-differentiated  neuroendocrine  tumor)と診断された(2010年WHO分類ではNET  G1)。切除断端は陰性であり、血管浸潤・固有筋層への浸潤は認められなかった。この診断結果を受けて、CT検査を行ったが、明らかな遠隔転移・リンパ節転移などは認められず、血液検査でもガストリン・セロトニンなどのホルモン値やNSEの上昇は認められなかった。その後も慎重に経過観察としているが、切除後約1年経過した現在でも、再発の徴候は認めていない。神経内分泌腫瘍は増殖能や組織型によって予後が規定される疾患であり、切除後も経過観察が重要である。今回、内視鏡的に切除し得た直腸の高分化型神経内分泌腫瘍の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。