日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.4型大腸癌の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
石田 剛士、廣瀬 純穂、小嶋裕一郎、石田 泰章、川上  智、久野  徹、深澤 佳満、岩本、小俣 政男
山梨県立中央病院 外科
史光、細田 健司、鈴木 洋司、望月  仁
山梨県立中央病院 病理
中山 裕子、古屋 一茂、宮坂 芳明、小山 敏雄

症例:63歳、女性。主訴:左下腹部痛、腹部膨満感。既往歴:37歳、子宮頸癌のため放射線治療。現病歴:2012年1月中旬より左下腹部痛があり、その後腹部膨満感が悪化したため3月初旬某院受診。CTにてS状結腸から直腸Rsの壁肥厚および狭窄部より近位側の拡張を認め、同院入院。同院の大腸鏡検査時の狭窄部からの生検では、悪性所見は認められなかった。確定診断が得られないため、精査目的に当科に転院。転院時、腹部は膨隆し腸蠕動音亢進、左下腹部に圧痛を認めた。CEA  1.4  ng/mL、CA19-9 18.6U/mLであった。腹部単純レントゲン写真では著明な大腸ガスを認めた。CTでは、前医と同様にS状結腸から直腸に壁肥厚・内腔の狭小化があり、有意なリンパ節腫脹は認めなかった。注腸造影では狭窄部位への造影剤の流入を認めなかった。大腸鏡検査では、狭窄の遠位側は浮腫状で白苔の付着は認めず、近位側への挿入は不可能であった。この段階では放射線治療に伴う炎症、子宮頚癌再発による腸管浸潤、4型大腸癌、腸間膜脂肪織炎等を考えたが、同部位の生検で低分化型腺癌との結果であり、S状結腸からRsの4型大腸癌と診断した。その後当院外科で開腹手術を施行。回盲部に5cmの腫瘤を認め回盲部およびS状結腸から直腸切除、人工肛門造設を行った。切除標本の肉眼所見では病変の主座は直腸Rsでtype4, 90 x 50 mm, por1, pSE, INF c, ly2, v2, pN1(1/12), pPM0, pDM0, pRM1, pM1(回盲部), fStage IVの所見であった。

以上、比較的稀な4型大腸癌を経験したので、文献的考察を加えて報告する。