日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.S状結腸軸捻転症例の治療経過の検討

富士見高原医療福祉センター 富士見高原病院 内科
太田 達郎、小松 修
富士見高原医療福祉センター 富士見高原病院 外科
岸本 恭、塩澤 秀樹、安達 亙

「目的」S状結腸軸捻転症は比較的まれな疾患である。内視鏡的治療が行われるが、整復後の経過に関する詳細な検討は少ない。本症の治療経過を明らかにするために当院の症例を検討した。「対象」過去9年間のS状結腸軸捻転症10例、男性6例、女性4例を対象とした。年齢は61歳から96歳であった。「成績」初発時に大腸内視鏡検査を行わずに緊急開腹手術が行われた症例は2例であった。開腹所見から捻転整復のみが行われた。初発時に大腸内視鏡検査が行われた症例は8例であった。7例(87.5%)において大腸内視鏡での整復が可能であった。捻転解除ができなかった症例は1例のみで、この症例に対しては緊急開腹、S状結腸切除術が行われた。初回治療後の経過をみると、外科的に捻転整復した2例では、1例に軸捻転の再発を認め、後日、S状結腸切除術が行われた。内視鏡的に整復された7例では、すべての症例に軸捻転症の再発を認め、再度の内視鏡的治療や開腹下のS状結腸切除術が施行された。このうちの1例は内視鏡による再整復を試みたが強い虚血性変化を認めたため緊急手術を行って壊死腸管を切除した。「結語」S状結腸軸捻転症に対する大腸内視鏡による整復の成績は良好である。しかし、捻転整復後の再発率は非常に高く、追加治療の必要性が高いことが示された。