日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.虚血性大腸炎様症状にて発症したCollagenous colitis の1例

国立病院機構 信州上田医療センター 消化器内科
藤森 一也、丸山 康弘、丸山 雅史、滋野 俊、吉澤 要
信州大学 消化器内科
柴田 壮一郎、金井 圭太

症例は86歳、女性。脊柱管狭窄症、逆流性食道炎等にてNSAID, タケプロン等を内服していた。受診日の未明より臍周囲痛、数回の下痢が出現、朝より数回の血便となり当院救急外来を受診し入院した。ショック症状なし。貧血なし、黄疸なし。腹部は軟、左下腹部に圧痛あり、反動痛なし。検査値では、WBC 8000 RBC 363 Hb 11.8 Hct 33.6 PLT 14.1 CRP 0.3であった。症状から虚血性大腸炎を疑い大腸内視鏡検査を施行した。右側結腸に異常を認めなかった。脾弯曲近くの下行結腸に数cm の粘膜裂創(mucosal tear)を認めこの病変が出血の原因と考えられた。周囲の粘膜には炎症所見は見られなかった。また、遠位下行結腸にも白苔を有する縦走潰瘍を認めた。内視鏡像より、虚血性大腸炎の所見はなく、Collagenous colitis を疑い大腸の各分節より生検を施行した。組織所見では大腸粘膜上皮下のcollagen band が約40μm と肥厚し粘膜固有層に炎症細胞浸潤を認め、Collagenous colitis と診断した。数日の絶食・輸液で症状は改善し第5病日退院した。最近本邦では、ランソプラゾールに関連したCollagenous colitis の報告が多い。多くは慢性下痢を呈するが、本例のように急激な腹痛、血便で発症する報告も散見される。ランソプラゾール内服患者では本疾患の発症に注意を払う必要があると考えられた。