日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.大腸憩室出血症例における出血部位診断と止血法についての検討

信州上田医療センター 消化器科
柴田 壮一郎、滋野 俊、吉澤 要、藤森 一也
東京北社会保険病院 消化器内科
鶴田 史

当院で経験した大腸憩室出血症例において、出血憩室の部位診断および止血成績についてretrospective に検討した。対象は平成18年1月から24年2月までに当院で大腸憩室出血と診断した131例である。この131例を、通常観察で診断を行い、止血法にクリップ法を用いた85例(男56例、女27例)と内視鏡先端にキャップを装着して観察(以下キャップ法)し、止血法に結紮法を用い46例(男30例、女16例)の2群に分けた。なお、結紮法はオリンパス光学社製大腸内視鏡スコープPCF Q260JIに、食道静脈瘤結紮術用の住友ベークライト社製EVL デバイスを装着して使用した。両群とも、70歳以上の高齢者が多く、ワーファリン・アスピリンの内服はそれぞれ17%・38%、14%・ 36% であった。出血憩室の部位を特定できた例は、通常観察群では30/85例(活動性出血29例、露出血管1例)34% に対し、キャップ法群では20/46例(活動性出血15例、露出血管5例)43% で両群間に差は見られなかった(P=0.59)。止血成績では、再出血を来した例は、クリップ法群 9/30例、30%に対し、結紮法群 1/20例、5%と結紮法が勝っていた(P=0.03)。大腸憩室出血の止血法はこれまでクリップによる止血法が広く普及していたが、再出血が決して少なくないことが指摘されてきた。最近、結紮法による大腸憩室出血の止血成績について良好な成績の報告が散見される。結紮法では、憩室を十分内翻できない場合があること、また懸念される穿孔・腹膜炎等の偶発症発生についての検討が十分ではないが、今後大腸憩室出血の有力な止血法のひとつとなる可能性が考えられた。