日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.経過が追えた胆管内乳頭粘液性腫瘍(IPNB)の1切除例

新潟県立吉田病院 内科
中村 厚夫、野澤 優次郎、遠藤 新作、八木 一芳、関根 厚雄
新潟県立吉田病院 外科
田島 陽介、岡本 春彦、小野 一之、田宮 洋一

症例は50代女性。2010年6月上腹部痛にて近医受診、腹部USで左肝内胆管の拡張を認め当院紹介入院、CT上腫瘍性病変は認めずERCPでは粘液を疑う透亮像を認め、B3がやや拡張していた。胆汁細胞診はclassII。ENBD造影も前回とは形の異なる細長い透亮像を認め粘液を疑った。経乳頭的胆道鏡(OLYMPUS CHF-BP260)を行ったが粘液は認めず観察範囲では胆管に異常所見は見られなかった。ENBDチューブをガイドに経鼻用内視鏡(OLYMPUS XP260N)を胆管に挿入、今回も悪性所見は得られなかった。1ヶ月後3回目の胆道鏡目的に入院、ERCP像でB3に粘液を疑う透亮像が以前よりはっきりしたが胆道鏡では悪性像は得られなかった。今回の胆汁細胞診はclassIII、左肝内胆管生検でatypical cellが見られたが癌は認めなかった。胆管内乳頭粘液性腫瘍(IPNB)をもっとも疑ったが確診が得られず経過観察した。1ヶ月ごとの採血ではγGTPの僅かな上昇のみであった。2011年8月のUS、CTでB3肝内胆管の拡張が前回より強くなり入院精査を行った。ERCPでB3の欠損像が見られその末梢が拡張しており胆管内の腫瘍を疑った。胆汁細胞診はclassV、肝門部の生検では異常を認めず肝左葉切除術をおこなった。病理診断は肝癌取り扱い規約に従い肝内胆管癌、胆管内発育型、15x8mm、中分化腺癌、リンパ節転移なしと診断した。本症例はIPNB(Intraductal papillary-mucinous neoplasm of the bile duct)と考えられた。僅か1年ではあるが経過が追えた貴重な症例と考え報告した。