日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.バルーン内視鏡による胃術後消化管再建症例における総胆管結石治療

長野赤十字病院 消化器内科
三枝 久能、松田 至晃、今井 隆二郎、徳竹 康二郎、藤澤 亨、森 宏光、和田 秀一、清澤 研道
長野赤十字病院 総合診療科
田中 景子

これまで胃術後再建症例のうち,Billroth II法再建の一部や胃全摘後Roux-en Y再建術後症例においては,Vater乳頭への内視鏡到達が困難であり,膵胆道疾患の内視鏡的治療が困難だった。しかし,バルーン内視鏡を使用することにより,近年これらの症例においても内視鏡治療が行われるようになっている。当院では2008年にオリンパス社シングルバルーン小腸内視鏡SIF-Q260(以下SBE)を導入し,胃術後消化管再建症例の膵胆道疾患に対する治療に取り組んでいる。

胃術後消化管再建症例におけるSBEを使用したERCP(以下SB-ERCP)は,SBEによりVater乳頭へ到達した後,オーバーチューブを残したまま内視鏡を抜去して,オーバーチューブの側孔から上部消化管内視鏡を再挿入し,膵胆管にカニュレーションする。上部消化管内視鏡を用いるため,ERCPで使用するデバイスが利用可能である。ダブルバルーン小腸内視鏡を用いたERCP(DB-ERCP)では,有効長152cmのフジフィルム社ダブルバルーン小腸内視鏡EI-530Bを使用することで,内視鏡交換は不要である。

2011年6月から2012年3月まで,総胆管結石症例8例に対し,SB-ERCP8回,DB-ERCP3回,計11回の内視鏡的治療を試みた。バルーン内視鏡によるVater乳頭到達は全例で可能だったが,SB-ERCPでは2件で内視鏡交換の際にオーバーチューブが抜け,再挿入できなかった。胆管造影は8件で可能であり,6件で胆道ドレナージが成功した。2例では結石を完全に除去し得た。治療に伴う重篤な偶発症は認めなかった。

バルーン内視鏡を用いた胃術後消化管再建症例におけるERCPは有用な手技であり,今後さらなる発展が望まれる。