日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.輸入脚の狭搾を内視鏡的にバルン拡張したあと切石し得た総胆管結石の一例

松本協立病院
芹澤 昌史、冨田 明彦

症例は80代男性。主訴は肝胆道系酵素値異常。平成23年9月脳梗塞治療中に胆道系酵素値が上昇し腹部CT上massが認められるとして当院へ転院となった。来院時37.1度の発熱であり胆管炎も軽度であったため保存的治療にて経過を見た。しかし第8病日に悪寒戦慄が出現し血液検査で胆管炎増悪が認められたたため緊急ERCP施行した。胃切除後B‐2再建であり直視鏡を挿入したが輸入脚には狭搾があり乳頭へは到達できなかった。このためPTCDを施行しドレナージのみを行い、外科に治療を依頼した。なおこの際狭窄部から奥を造影したところ輸入脚盲端には結石と思われる巨大な陰影欠損を認め、これが前医でmassと診断されたものと判断した。11月手術を行ったが腸間内の結石除去、胆管切開による総胆管結石除去、Tチューブ挿入のみ行われ、狭搾解除は施行されなかった。総胆管に胆石は残存し瘻孔からの結石除去を試みたが果たせず、再びERCPによる胆管の治療が当科に依頼された。今回は輸入脚狭窄部をバルン拡張したあとEPBDを施行し切石を行えた。輸入脚の狭搾は盲端に存在した腸内結石の関与が考えられたが、文献検索した限りではこれまで国内で同様な状況で内視鏡治療を行った報告は認めなかった。