日本消化器内視鏡学会甲信越支部

20.Segmental arterial mediolysis(SAM)が成因と考えられた急性膵炎後膵多発性仮性動脈瘤の一例

長野市民病院 消化器内科
神保 陽子、越知 泰英、長屋 匡信、多田井 敏治、伊藤 哲也、関 亜矢子、原 悦雄、長谷部 修

症例は64歳、男性。2011年1月頃より心窩部違和感、嘔気が出現し近医を受診したところ黄疸を指摘されて精査加療目的に当院に紹介された。腹部造影CT検査にて腹膜播種、左鎖骨リンパ節腫大を伴う中部胆管の狭窄が疑われた。ERCPを施行したところ中部胆管に不整狭窄を認め胆管癌と診断し、十二指腸乳頭切開術、胆管生検、細胞診、経鼻胆道ドレナージを行った。術後より腹痛が出現し、アミラーゼは2066IU/lと高値であり、急性膵炎重症度分類にて軽症のERCP後膵炎と診断した。絶食、補液、FOY投与による保存的加療を行い膵炎は改善した。第12病日、突然の腹痛を認めたため腹部造影CT検査を施行したところ、ERCP前には認めていなかった膵多発性仮性動脈瘤を認め、膵頭部血腫も認めていた。また、紹介時の腹部造影CTを見直すと肝動脈の不整や腹腔動脈狭窄を認めSegmental arterial mediolysis(SAM)の存在が示唆された。全身状態が安定していたため保存的加療を行い、第18病日の腹部造影CT検査では膵頭体部の仮性動脈瘤は縮小し、内腔の消失、血腫の改善を認めていた。その後、中部胆管癌に対して内瘻化を行い家族の希望で民間療法にて加療中であるが、現在までCT検査上膵頭部血腫に変化なく、多発仮性動脈瘤も縮小傾向を認めている。