日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18.重症急性膵炎として発症し、EUS-FNAにて確定診断した十二指腸乳頭部癌の一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
戸枝 路子、堂森 浩二、山本 幹、五十嵐 正人、須田 剛士、青柳 豊、
新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
塩路 和彦、河内 裕介、小林 正明、成澤 林太郎
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
高野 可赴、黒崎 功
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
滝澤 一泰
新潟大学医歯学総合病院 病理部
須貝 美佳5、梅津 哉5

症例は60歳代の男性。2011年10月15日腹痛を主訴に近医を受診。白血球、アミラーゼの上昇より急性膵炎と診断され入院。入院当日は予後因子 0、CT grade 0と軽症であったが、入院2日後には予後因子 2点、CT grade 2で重症と判断され当院救急搬送された。ICUに入院し、動注療法とCHDFを開始。EDチューブからの腸管滅菌も行った。徐々に改善し、11月3日からは流動食を開始した。CT上脾静脈に血栓を認めていたため、静脈瘤のチェック目的に上部消化管内視鏡検査を施行したところ、十二指腸乳頭部の腫大を認めた。EUSでは十二指腸乳頭部に12mm大の腫瘤を認め、非露出型の乳頭部癌が疑われた。ERCP+ESTによる生検も考えたが重症急性膵炎後でありERCP後膵炎のリスクを考慮し、EUS-FNAを施行した。細胞診にてClass V、組織診にてadenocarcinomaと診断され非露出型十二指腸乳頭部癌と確診した。経過中に腹痛の増悪と炎症の再燃あり、EUSガイド下に膵仮性嚢胞ドレナージも行った。CTで明らかなリンパ節転移なく、EUSにて十二指腸筋層は保たれ、膵管、胆管への進展もなく比較的早期の十二指腸乳頭部癌が考えられたが、傍乳頭憩室を伴うこと、非露出腫瘤型であることより内視鏡的乳頭切除は適応外と判断。重症急性膵炎後の亜急性期でもあったが、12月22日外科切除を施行、当初は膵頭十二指腸切除または膵全摘+胃部分切除を予定していたが、炎症の波及が広範囲であり膵全摘+胃全摘術を必要とした。病理学的には深達度odの乳頭部癌でリンパ節転移陰性であった。重症急性膵炎後などERCPの高危険症例に対し、EUS-FNAは安全に施行でき非常に有用と考えられた。