日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.胃に多発転移性腫瘤を呈した類上皮肉腫と考えられた1例

済生会新潟第二病院 消化器内科
堀米 亮子、窪田 智之、本間 照、関 慶一、石川 達、吉田 俊明、上村 朝輝
済生会新潟第二病院 外科
武者 信行、酒井 靖夫
済生会新潟第二病院 病理診断科
石原 法子

70歳代、男性。3ヶ月前から腰痛、下肢脱力感が出現した。次第に食欲低下し5kg/月の体重減少となり近医受診、腹部USで多発肝腫瘤、上部消化管内視鏡検査(EGD)で多発する胃腫瘤を指摘され当院紹介となった。CTでは肺、肝に多発腫瘤、広範なリンパ節腫大、皮下、後腹膜、腸間膜にも転移と思われる多発結節を認めた。EGDでは十二指腸に少なくとも2個の粘膜下腫瘍、胃体部大弯側に4個の粘膜下腫瘍を認めた。隆起の中心は陥凹し潰瘍を形成したものもみられた。大きさは十二指腸では5mm程度、胃では20mmまでのものがみられた。内視鏡的鑑別診断として転移性腫瘍の他に、多発GIST、悪性リンパ腫が挙げられた。潰瘍辺縁、潰瘍底から生検されたがboring biopsyは行われず、腫瘍細胞は検出されなかった。翌日、前胸部皮下結節から生検を行った。中心壊死が著明な、浸潤性発育を示す腫瘍で、腫瘍細胞は類円形、核は大きく明瞭な核小体を有し類上皮型の肉腫や低分化な癌が考えられた。特殊染色では粘液(-)、免疫染色ではサイトケラチンAE1/AE3陰性、CAM5.2陰性、CD34がびまん性に強陽性だが、KIT陰性、CA125も陰性だった。サイトケラチン陰性なので確定はできないが、epithelioid sarcomaが最も考えられた。新潟大学整形外科へ転院しアドリアシンによる化学療法が行われた。肉腫の胃転移は稀であり、文献的考察を加えて報告する。