【目的】当院における上部消化管出血の特徴を明らかにする。【方法】2008年1月~2011年12月に当院で上部消化管出血に対して内視鏡的止血術を行った274症例を検討した。静脈瘤およびESD等治療後の症例は除外した。止血方法は基本的にクリップを使用した。【結果】274症例で男女比は男性193人、女性81人であった。疾患の内訳は胃潰瘍152症例(56%)、十二指腸潰瘍53症例(19%)、マロリーワイス症候群21症例(8%)、血管拡張症17症例(6%)、その他31症例(11%)であった。その他食道潰瘍、悪性腫瘍等が含まれている。症例を50歳未満(21症例)、50-59歳(35症例)、60-69歳(56症例)、70-79歳(84症例)、80-89歳(57症例)、90歳以上(21症例)の6グループに分けて検討した。年齢別の疾患内訳は年齢を問わず胃十二指腸潰瘍が最も多い原因疾患であった。死亡例は50歳未満では1症例(4.8%)、50-59歳では0症例、60-69歳では4症例(7.1%)、70-79歳では5症例(6.0%)、80-89歳では6症例(10.5%)、90歳以上では4症例(19%)で高齢者ほど死亡率が高かった。死亡症例20症例のうち、胃潰瘍8症例(40%)、十二指腸潰瘍6症例(30%)、悪性腫瘍4症例(20%)であった。死因としては止血困難症例8症例(40%)、悪性腫瘍3症例(15%)、肺炎2症例(10%)、腎不全2症例(10%)、その他、敗血症、気胸、肝細胞癌破裂、間質性肺炎、突然死がそれぞれ1症例ずつであった。【結論】年齢が高くなれば高くなるほど死亡率が高くなる傾向があり、高齢者ほど迅速に的確な内視鏡治療を行うことが必要と考えられた。