日本消化器内視鏡学会甲信越支部

14.大きく発育した胃ポリープにより著明な貧血を来たしたCowden病の1例

信州上田医療センター 消化器内科
金井 圭太、柴田 壮一郎、藤森 一也、滋野 俊、吉澤 要
東京北社会保険病院
鶴田 史
信州上田医療センター 研究検査科
前島  俊孝

症例は38歳、男性。単純性甲状腺腫にて19歳時に甲状腺亜全摘術を受けた。術後の甲状腺機能低下に対して処方を受けている近医で、2011年7月にHb 5.7 g/dlと貧血を指摘された。上部消化管内視鏡検査にて胃に多発するポリープを認め、生検で過形成性ポリープと診断された。同病変に対する加療目的で当科を紹介受診した。同年8月に上部消化管内視鏡検査を再検し、食道に白色扁平な隆起の密集、胃には体下部大弯前後壁寄りに山田4型の有茎性ポリープ(径約40mm大と15mm大)を認める他、全体に1~3型ポリープを多数認めた。十二指腸にも多発するポリープを認めた。また大腸内視鏡検査では小ポリープを散在性に認めた。貧血の原因が胃に多発する過形成性ポリープであることを疑い、胃体下部の2病変に対し9月にポリペクトミーを施行した。切除したポリープの病理組織像は、過形成な腺窩上皮・嚢胞状に拡張した腺成分を有し、筋線維束の増生も見られる過誤腫性変化を認めた。本症例は消化管にびまん性に過形成性・過誤腫性ポリープが混在し、食道にも病変を認めていたことからCowden病が疑われた。遺伝子検査を施行し、PTEN遺伝子に点変異を認めたことからCowden病と診断された。本疾患は、通常内視鏡検査にて偶発的に消化管ポリポーシスを認めることから診断に至ることが多いとされているが、本症例は胃過形成性ポリープが貧血の原因となっていた点が特異な経過であった。本疾患は多臓器に悪性腫瘍を合併するとされているため、消化管ポリポーシスで食道にも病変を認めた場合には本疾患を疑い、悪性腫瘍発生に対する全身検索を長期的に行う必要がある。