日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.短期間に発生した多発性胃腫瘍に対し計画的内視鏡治療を施行した一例

諏訪赤十字病院 消化器科
溜田 茂仁、太田 裕志、進士 明宏、武川 建二
諏訪赤十字病院 病理部
中村 智次

症例は83歳男性.主訴は胃部不快感.2005年から前立腺癌(Adenocarcinoma, wel-mod<por, Gleason score 5+4)に対しホルモン剤、ステロイドで加療中.2010年2月から、肺腺癌(pT2N2M0)の術後化学療法中に胃部不快感の精査で上部消化管内視鏡検査(EGD)を施行.胃潰瘍瘢痕、十二指腸潰瘍瘢痕のみ認めた.2011年11月、胃部不快感に対しEGDを施行.A:前庭部に過形成ポリープ2個;Group I、B:前庭部小弯側IIa;Group IV、C:体下部前壁にIIa集簇様病変;Group III、D:体中部後壁にI型隆起性病変;Group IIIを認めた.短期間に多発性に腫瘍性病変の発生があり、他部位の胃粘膜においても腫瘍性病変の発生余地の可能性が考えられ、外科的治療も考慮したが、他癌治療中であり内視鏡的治療の方針となった.病変BのESD結果は0-IIa, M, pap>tub1の高分化型adenocarcinoma、病変Cはearly carcinoma in adenomaでadenomaに隣接してcarcinoidも認め、病変Dは0-IIa, M, pap-tub1で、3病変全て治癒切除であった.本症例は、1年9か月の短期間に多発性に腫瘍性病変が発生したこと、計画的にそれぞれの病変を内視鏡的一括切除することで詳細な診断がなされたこと、また複数科にわたる重複癌に対するサーベイランスの重要性と困難さなど示唆に富む症例と考えられ、若干の文献的考察を加えて報告する.