日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.広範な消化管病変を認めた好酸球性胃腸症の再発と考えられた一例

安曇野赤十字病院 消化器内科
望月 太郎、樋口 和男、須藤 貴森、一條 哲也

症例は32歳男性。主訴:黒色便・臍周囲部痛。既往歴:小児喘息、腰椎後縦靱帯骨化症、エビ・杉花粉にアレルギー反応あり、内服薬なし家族歴:特記事項なし  職業:農業団体職員 作業従事現病歴:1990年(11歳)にS大学病院で好酸球性胃腸炎と診断された。15歳まで内服加療受け再発は認めなかった。以後、内服は終了していたところ、高校在学中に3回、大学在学中に1回の腹痛・吐き気・下痢の発作があったが、いずれもプレドニゾロン(以下PSL)の投与で軽快し、漸減終了とされていた。 大学生の時はT大学病院消化器内科に入院し精査加療をうけている。 2010/4/15より3日間、黒色便が出現、4/20夕食後より腹痛出現し、4/21近医を受診した。末梢血 白血球 12300/mm3と上昇を認め、好酸球性胃腸炎の既往あり、精査を勧められた。4/27 当科紹介初診。WBC 19100 /mm3、好酸球 35.3%と好酸球増多認め、CRP 2.27 mg/dl、血沈 10と軽度炎症反応を認めた。IgEは180 IU/ml。 CTにて、中下部食道・胃・十二指腸・小腸・上行結腸・下行結腸に広範な壁肥厚を認め、周囲脂肪織濃度上昇や腹水、膀胱の壁肥厚も認めた。上部消化管内視鏡検査にて、食道粘膜の発赤・糜爛・浮腫を認めたが、明らかな出血部位を認めなかった。生検組織像では、食道・十二指腸に好酸球浸潤を認め、好酸球性胃腸炎に矛盾しない所見であった。5/19より PSL 20mg内服開始後、腹痛は翌々日に消失した。PSL漸減し、6/2に終了した。 以後再発なく、現在まで経過している。比較的まれな疾患であり、広範な消化管および内臓の炎症を来す例は貴重と考え報告する。