日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.ELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery)を行った中下咽頭癌の1例

諏訪赤十字病院 消化器科
篠崎 史香、進士 明宏、太田 裕志、武川 建二、溜田 茂仁、上條 敦、山村 伸吉
諏訪赤十字病院 病理部
中村 智次

症例は68歳、男性。主訴は胸焼け。6年前まで10本/日を45年間の喫煙歴、および、チューハイ1L/日の飲酒歴あり。近医より当科にスクリーニングEGD依頼あり。通常観察で中下咽頭に発赤を伴った血管透見不良域を認め、NBI拡大内視鏡検査を施行したところ、異常血管像(蛇行、走行異常、大小不同)があり、ヨード染色および生検は未施行であったが癌を強く疑った。患者の同意を得て、当院での佐藤式彎曲型喉頭鏡を用いたELPSの第1例目となった。佐藤式彎曲型喉頭鏡は硬性鏡であり、粗雑に扱うと声帯損傷などを来しうるため、扱いに注意が必要で、耳鼻科専門医に挿入および術中助言を依頼し、施行した。切除デバイスとしては、フックナイフを用いた。切除後は喉頭浮腫や、出血による窒息予防のため、翌日止血確認を行うまで挿管下で管理した。切除部の局所疼痛以外には、有害事象は認められなかったが、経口摂取は、患者本人の希望で緩徐にすすめたため、術前日入院を含めて、13日間の入院期間となった。切除標本では18×13mm大の扁平上皮癌であり、TisN0M0, Stage 0であった。術後3ヶ月後に再度全身麻酔下、佐藤式彎曲型喉頭鏡を用いヨード散布、NBI拡大を併用して経過観察を行ったところ、切除時に認識していない別部位に数mm程度のヨード不染帯を認め、引き続き厳重経過観察を行っている。表在咽頭癌に帯するELPSは有用と思われるが耳鼻科医との連携が不可欠と考えられる。