40歳代、男性。高血圧、高コレステロール血症で近医通院加療中。健診便潜血陽性で精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行した。脾弯曲に約15mmの粘膜下腫瘍様隆起を認めた。周囲からのひだ集中が目立ち、隆起中央部は軽度陥凹し白色調を呈していたが、粘膜欠損はみられなかった。病変中央から3個生検されたうちの1個に、粘膜固有層から粘膜下層に錯綜増生する紡錘形異型細胞を認めた。免疫染色の結果SMA陽性、Desmin陰性、KIT陰性、CD34陰性、S-100蛋白陰性であり平滑筋系腫瘍と診断、さらにKi-67標識率は約80%と高く悪性病変と考えられた。CTでは隣接臓器浸潤や転移巣を認めず、2カ月後横行結腸切除術が行われた。切除標本の病理組織では腫瘍は粘膜筋板から発生し、粘膜内と粘膜下層両方向に浸潤性発育を示していた。深達度は固有筋層にわずかに浸潤、脈管侵襲は認めなかった。核分裂像は15/10HPF、Ki67標識率は約50%であった。GISTの疾患概念が確立されて以降、GISTと鑑別される大腸平滑筋肉腫は稀な疾患であり、さらに本症例のように粘膜筋板由来と考えられる小さな腫瘍で、固有筋層への微小浸潤で留まっている段階での報告はみられない。平滑筋肉腫の発育進展を考える上で貴重な症例と考えられ、文献的考察を加えて報告する。