日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.粘膜筋板由来と考えられる横行結腸の固有筋層微小浸潤平滑筋肉腫の1例

済生会新潟第二病院 消化器内科
関 慶一、本間 照、窪田 智之、石川 達、吉田 俊明、上村 朝輝
新潟大学 大学院 消化器内科分野
青柳 豊
済生会新潟第二病院 消化器内科、新潟大学 大学院 消化器内科分野
長島 藍子
小堺医院
小堺 郁夫
済生会新潟第二病院 外科
桑原 明史、酒井 靖夫
済生会新潟第二病院 病理診断科
石原 法子

40歳代、男性。高血圧、高コレステロール血症で近医通院加療中。健診便潜血陽性で精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行した。脾弯曲に約15mmの粘膜下腫瘍様隆起を認めた。周囲からのひだ集中が目立ち、隆起中央部は軽度陥凹し白色調を呈していたが、粘膜欠損はみられなかった。病変中央から3個生検されたうちの1個に、粘膜固有層から粘膜下層に錯綜増生する紡錘形異型細胞を認めた。免疫染色の結果SMA陽性、Desmin陰性、KIT陰性、CD34陰性、S-100蛋白陰性であり平滑筋系腫瘍と診断、さらにKi-67標識率は約80%と高く悪性病変と考えられた。CTでは隣接臓器浸潤や転移巣を認めず、2カ月後横行結腸切除術が行われた。切除標本の病理組織では腫瘍は粘膜筋板から発生し、粘膜内と粘膜下層両方向に浸潤性発育を示していた。深達度は固有筋層にわずかに浸潤、脈管侵襲は認めなかった。核分裂像は15/10HPF、Ki67標識率は約50%であった。GISTの疾患概念が確立されて以降、GISTと鑑別される大腸平滑筋肉腫は稀な疾患であり、さらに本症例のように粘膜筋板由来と考えられる小さな腫瘍で、固有筋層への微小浸潤で留まっている段階での報告はみられない。平滑筋肉腫の発育進展を考える上で貴重な症例と考えられ、文献的考察を加えて報告する。